2013/02/02

松原右樹先生の遺稿集『熊野の神々の風景』

 和歌山を代表する民俗学者、故・松原右樹先生の遺稿集が出版されました。許可をいただき、ブログに情報を掲載させていただきます。
 松原先生には、名草戸畔の取材をする中で、「和歌山を調べるならこの方には会わないと」と友人にご紹介いただき、お会いしたことがあります。熊野の山を歩きヒダル神に遭遇するなど、素敵なお話をたくさん伺いました。本を読むだけでは体感できない紀州熊野の古代や民俗を語ることができる稀有な方でした。
 『名草戸畔 古代紀国の女王伝説』でも、松原先生が採集された民話をいくつもご紹介させていただきました。

『熊野の神々の風景』の詳細は以下のとおりです。貴重な本なので、ご興味のある皆様、この機会にぜひお求めください。

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『松原右樹遺稿 熊野の神々の風景』刊行趣意書

 松原右樹先生が長逝されて、ひと歳。今春、展墓させていただいた砌に、令室から大きな封筒が私に手渡されました。中には、A四判紙が百七十枚。どの一片にもワードプロセッサでぎっしり打たれた文章。先生がご存命の折から上梓を庶幾されていた原稿でした。その夜、「熊野のケガレ」「本宮に降臨する三枚の月」「ゴトビキ岩の秘儀新宮」「那智ノ滝の妖しい魅力」「熊野三山・神々の原像」の五章から成る長篇を通読しながら、風景の見方を教えていただいた出会いの頃から昨春までを追想しておりました。
 日々の務めを忽せにせず、また埋没することもなく、国語教育に、民俗学研究に、人権意識の高揚に、公私の時間を惜しまず粉骨砕身されるお姿に、周囲の私たちは先生のご健康を案じながらも甘えつづけて参りました。早過ぎた晩年に先生は、病を宥め、すかしながらキーボードに向かわれたのでしょう、時間が許せばもっと手を加えたく思われたのではないかと推測される章句もあります。編集作業に携わる同志と語らい、魯魚の誤りを正すにとどめ、先生のご意図を裏切らないように留意して本文校正にあたりましたが、先生のご意見を永遠にうかがえなくなってしまったことは、痛恨の極みとしか申せません。文中に散見される繰り返しに際しても、読者諸賢には、循々と古道を歩き諄々と過去現在未来を説かれた先生の声調に耳目を委ねていただきたく存じます。
 先生は、文字通り万巻の書を読破し、手に入る限りの史料を渉猟されました。しかし、先生の遺された文章は、書籍を博捜すれば口にすることが許されるという種類のものではありません。この著作にみられる言葉は、発話者がその身体を賭けて保証する以外に維持することのできないものとなっています。知性の面でも、倫理的にも、身銭を切って社会を領導する責務感を先生の姿勢から受け取られた方々が多いのではないかと思います。先生に学んだ方、ともに仕事をされた方はもちろん、先生を知らない多くの方々にも読んでもらいたい。私どものそうした思いに呼び掛け人の皆様も同期(シンクロナイゼーション)してくださいました。この遺稿が多くの読者に迎えられますよう、刊行の挙を諒とせられ、ご協力賜りたくお願い申し上げます。
二〇一二(平成二四)年九月後学島﨑英夫謹識

【呼び掛け人】代表 岩橋昭(関西外国語大学特任教授)[以下五十音順]
生駒崇宣(元大阪府立豊中高等学校長)/河本伸二郎(阪南大学理事長)
小山譽城(和歌山県立凌雲高等学校教諭/小弓場弘文(和歌山文化協会郷土部部長)
田中修司(「藤岡家住宅」理事長)/松山馨(和歌山短歌会代表)
安井理夫(元田辺市立本宮中学校長)/山本昌治(元大阪青山短期大学教授)
吉田昌生(藤白神社宮司)/湯峯裕(大阪府高等学校国語研究会理事長)

『松原右樹遺稿熊野の神々の風景』刊行要領

本書の刊行については、「松原右樹先生遺稿刊行会」を編集・発行元とし、賛同者の醵金で一部を支弁する自費出版とします。
予定体裁は、A5判・縦書き・本文三二〇頁程度、口絵カラー写真八頁です。
主な内容は、松原先生の遺稿「熊野のケガレ」「本宮に降臨する三枚の月」「ゴトビキ岩の秘儀新宮」「那智ノ滝の妖しい魅力」「熊野三山・神々の原像」の五章構成)、岩橋昭・生駒崇宣両氏執筆の追悼文、令室松原美智子さまの文を予定しています。
刊行時期本年十一月を予定。
醵金要領(お尋ねは事務局へ)
醵金は、おひとり千円といたします。
醵金いただいた方には、完成本を一部お渡しいたします。
二部以上をご希望の方は、一部につき千円を申し受けます。
恐縮ですが、醵金は前払いとさせていただきます。ご賛同いただける場合は、左記の郵便振替口座にお振込みください。
備考欄に、お名前(ふりがなも)・ご住所・電話番号、お持ちでしたらEメール・アドレスも明記ください。
振込通知が届いた方に、印刷・製本が出来次第、完成本を郵送いたします。

事務局
〒5828582大阪府柏原市旭が丘4698
大阪教育大学教職教育研究センター島﨑研究室
072-978-3454FAX072-978-3816
E-mail / shimaza@cc.osaka-kyoiku.ac.jp
(不在時もありますので、お尋ねはEメールで頂ければ有難いです)
事務局同人[五十音順](いずれも元あるいは現、大阪府立高等学校教員)
柴山美恵子/島﨑英夫/島田和夫/關篝
中井勤子/松村ひとみ/森田ムツ子
郵便振替口座(番号の公開は控えさせて頂きます。上記のメールアドレスにお問い合わせください)

2 件のコメント:

  1. 以下のブログに「熊野の神々の風景」の抜粋pdf、刊行趣意書pdfをアップしています。
    http://simaka.cocolog-nifty.com/

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  2. お返事おそくなりましたが、情報をありがとうございます。
    多くの方にお読みいただけたら嬉しいです。

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