2010/01/09

『こころの手足』中村久子/著



 幼い頃、特発性脱疽のため手足を切断し、辛苦を重ねた中村久子氏の自伝。中村氏は、見せ物小屋で「だるま女」の芸名で働くという壮絶な人生を振り返り、自らこの本を書いた。「だるま女」は都市伝説の語源にもなっていることでも知られるが、元祖であるこの女性の人生は都市伝説のそれとは大きく違う。神様からもらった体、自分はただ生きているのではなく生かされているのだと、どこまでもポジティブ。ヤクザと堂々と渡り合ったり、文学が好きで舞台の袖で万葉集を読んだりした人生の様々な場面を綴っている。どの場面も生き生きとしていて、文章が上手い人だなと思った。「自分は半端な教養を身につけていたために、いわゆるヘビ女のような、はっちゃけた芸人になりきれなかった」という中村氏の感性はニュートラルで共感できる。度胸と知性を兼ね備えた素敵な人物だ。これは障害を超えて誰の心にも訴える作品。ところで、今流行の「生かしていただいてありがとうございます」の元ネタはこれかもしれない。

2 件のコメント:

  1. 両手足を切断だなんて私には考えられない事です。
    私の耳の悪いこともちっぽけに思えてきます。
    彼女はそうした人生を送ることで私たちに気付きを
    与える役割もあったんでしょうね。

    「生かされている」って実感できるって
    素晴らしい事ですね。私もそう心がけたいと思います。

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  2. 中村久子氏は、まったく凄い人です。この方を知ると、人間って何が何でも生きるものなんだなと思いました。言い訳もなにも出来ないなあと。

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