2009/12/31

今年をふりかえる

 今年をふりかえると、前半はこもって原稿ばかり書いていた。名草戸畔(なぐさとべ)の原稿は、八月になってようやく伝承保持者の小薮繁喜氏と小野田寛郎氏にチェックしてもらえる段階まで完成した。3月末に和歌山へ最後の取材旅行に出かけたのだが、そこで見てきたことを原稿に書き加えたことも、完成が遅れた原因だった。しかし、入稿してしまったら修正できないので、結果的にはよかったと思っている。出版社への営業を開始したのは9月に入ってからだった。ここからは紆余曲折。その間も、何度も原稿をシェイプした。

 名草戸畔の営業をしている最中の10月半ば、突如としてイラストクリエイターHARIKENさんとユニットで展覧会をやろうという話になった。それで、同時進行でスプーのフィギュア制作や描き下ろしイラストの制作を開始。そして、あれよあれよという間に、イラストクリエイターズ・インク第一回目のエキシビジョン『精霊とモンスターの集い』が12月5日からスタートした。展覧会では本当にしあわせな一週間を過ごした。作品が伝わっていることを実感できた。そうしている間に、名草戸畔の方も動き出した。今年は、9〜10月ぐらいから、怒濤のように物事が動き出した感じだった。

 今年は、和歌山の友人たちや名草の写真を撮っているフォトグラファーの小野田麻里さん、HARKENさん、名草戸畔の出版についてアドバイスをしていただいた方々など、たくさんの人たちにお世話になった。本当にありがとうございました。また、展覧会を行ったことで、たくさんの人たちの出会いがあった。共感できるクリエイターの方たちとも出会うこともできた。新しい出会いに感謝の一年だった。
 それでは、みなさま、良いお年を。
 来年も、どうぞよろしくお願いします。

2009/12/26

絵本『ゆきのこうま』
















『ゆきのこうま』 さく/え 仁科幸子 フレーベル館

大好きな絵本作家、仁科幸子さんの新作絵本『ゆきのこうま』。青い雪の夜を描いた表紙がすてきな大判の絵本だ。ページを開くと、見返しに美しい雪の結晶が飛び込んでくる。














 雪がふりつもって森が真っ白になったある日のこと。森の仲間のかやねずみやこまどりさんたちは、「もりまつり」をするため、大きなクスノキに会いに行く。クスノキで何がおこるのかは、初めて読む人のために内緒にしておこう。「ゆきのこうま」は、白いねずみさんだけが存在を信じている動物、とだけ紹介しておく。

 「ゆきのこうま」は、心の中にある光だと思う。誰でも、絶望に取り憑かれると何も見えなくなって、「ゆきのこうま」の存在を信じられなくなってしまう。しかし、どんなにひどい絶望の中にいても「ゆきのこうま」はいる。「闇ばかりの世の中」ばかりを現実ととらえ、したり顔で「光などない」という人も多い。実はわたしも、かつてはそんなタイプだった。しかし、本当は、そういう心こそ偏った状態であり、冷静な状態ではない。人の心は、絶望と共に光も存在していて、どちらかに完全に支配されてしまうことはないはずだ。

 この絵本に描かれた「ゆきのこうま」を信じる絶対的にポジティブな心は、今の世の中にとって重要なメッセージを含んでいると思う。大人も子どももじっくり読んで欲しい、すてきな絵本だ。

2009/12/24

ブックサロン・オメガ探訪

クリスマスイブの今日、
ブックサロンOMEGAを初探訪。
















オメガは、サロン所蔵の本が自由に読めるカフェ。
本棚には、西欧オカルトエッセイで有名な澁澤龍彦、
『家畜人ヤプー』で知られる、沼昭三、
寺山修司など、ディープで面白い本でいっぱい。
本好きにはたまらないカフェだ。

ゴシック調の店内は、
写真で見ると敷居が高く見えるかもしれないが、
いざ、中に入ってソファーにすわると、
ものすごく居心地がよい。
長居して本を何冊も読破していく人が後を絶たないとか。
クリスマス・イブにぴったりな楽しい時間を過ごした。

蔵書以外に、読み終わった本を寄贈するコーナーもある。
なんと、このコーナーは、一人三冊まで持ち帰り自由。
『千夜一夜物語』『中国の神話』『ヘブライの神話』
をゲット。超嬉しい!

『スプーの日記』もオメガの蔵書に
仲間入りさせていただいた。

2009/12/12

“モンスターと精霊の集い”の写真です

イラストクリエイターズ・インク紹介コーナー


















HARIKENコーナー

描きおろしの新作。掛け軸とMANA BORD(まな板!!)


















なかひらまいコーナー
『スプーの日記』原画&描きおろしイラスト


















コラボ企画「インファラオ島の謎」コーナー


















残り3体になったスプーのフィギュア。
この後2体もいなくなりました。


















お土産コーナー
HARIKENのポップなモンスター・ステッカーと
スプーのポストカードなどが所狭しと貼り付けられた壁


















コレクターズの皆様から戴いたお花

2009/12/11

“精霊とモンスターの集い”大盛況で終了!

本日、一週間にわたって開催していたエキシビジョン。
たくさんの方にお越しいただき、大盛況で終了しました。
ありがとうございました。
素晴らしい一週間でした。

http://www.studiomog.ne.jp/ici/

とくに驚いたのは、外国の方がたくさん見えたこと。
言葉は通じなくても、
スプーの単行本や挿絵を手にとったり、展示した絵を見て
これが魔法使いのお話で、
スプーが体外離脱したりしていることを、
すぐに分かってくれた。
まさに、絵に国境はなかった。
また、こういう不思議な世界にも国境がないこともわかった。
こういう世界が好きな人は、世界中にいるのだ。
スプーの世界は絵を見てもらうだけで通じて、
内容もひじょうに受けた。
ポストカードやステッカーもたくさんお土産に買ってくれた。
中でも初日に「ビューティフル」といって
コラボ企画「インファラオ島の謎」の
精霊のポストカードを買ってくれた方は忘れられない。

コラボレーションさせていただいたHARIKENさんの
ポップで不思議なモンスターのイラストも、
やはり外国の方に超ウケ。
どよ〜んとしたスプーの世界とは対照的なモンスターの世界を
大はしゃぎしながら楽しんでいた。
HARIKENさんのキャラクターは、外国の方をはじめ、
通りすがりの女子高生の心もぐっと掴むほどパワー炸裂。
わたしもすごく楽しかった。

他にも、スプーの単行本を読んでいる方が真っ先に
フィギュアを買ってくれたこと、
畳のギャラリーで本を読んでくれた方がいたこと、
HARIKENさんのカードやステッカーと一緒に
スプーも買ってくれた方がたくさんいたことが、
とても嬉しく励みになった。
いろんな方がスプーや精霊の世界を楽しめることがわかって、
本当に嬉しかった。

会場にお越しいただいたすべての皆様に、感謝しています。
素敵な一週間を、ありがとうございました。

なかひらまい拝

2009/12/02

スプー工場?


(ついにスプーのフィギュア色塗り開始!)


(これは「手」)


(壮観!)


(ペイント済みのスプーはこうやって乾燥します)


(次々に色が塗られていく)


(そして乾かす)


(まるでスプー工場!)



完成品は展覧会で販売決定!
ハンドメードなのに1,800円。
限定14体です。

HARIKEN X なかひら まい EXHIBITION
モンスターと精霊の集い

日時:12月4日(金)〜12月10日(木)11:00〜20:00入場無料
※12月5日(土)17:00〜19:00にオープニング・パーティCookie&Monster(入場無料)を行います。お気軽に参加ください。(18:00〜LIVE PAINT決定!)

会場:原宿デザイン・フェスタ・ギャラリーEAST2F和室
JR原宿駅(竹下口)より徒歩9分
東京メトロ・銀座線/千代田線/半蔵門線・表参道駅(A2番口)より徒歩9分
東京メトロ・千代田線/副都心線・明治神宮前駅(5番口)より徒歩5分
地図:http://www.designfestagallery.com/submenu/contact/index.html

お問い合せ:03-3479-1442(デザイン・フェスタ・ギャラリー)

※イラストクリエイターズ・インクのウェブマガジン「SCRAP」始動! なかひら まい もポッドキャストに登場しています。CHECK IT OUT!

http://www.studiomog.ne.jp/scrap/hariken/index.html

2009/11/30

“モンスターと精霊の集い” ラインナップ

いよいよ展覧会が近づいてきました。
実は、久々のアナログ絵描き作業のため、
ここ数日ほとんどパソコンを開けていません。
絵の具を使っての手描きって凄く楽しいです。
商品ラインナップは、以下の通り。
みなさん、ぜひいらしてください。

販売商品ラインナップ(11/29現在)

HARIKEN
・Inpharao Monsters ポストカード
・Inpharao Monsters ステッカー
・ポストカードペン原画(額付き)
・MANA BOARD ART(まな板原画)
・キャンバス原画
・Adventure of Infarao 原画
・一点ものスケートボード板
・一点もの掛け軸
・その他、HARIKENグッズ

なかひら まい
・ポストカード
・ステッカー
・額付きポストカード
・スプーの日記単行本
・スプーのフィギュア(石斧粘土製/ハンドメード)
・ポストカード大水彩画(原画/額付き
・大判ポストカード大水彩画(原画/額付き)
・スプーの単行本シリーズ3冊
+ポストカード大水彩画(原画/額付き)※限定5セット
・B4サイズ水彩画(原画/額付き)

価格等はイラストクリエイターズ・インクHPでご覧になってください。
http://www.studiomog.ne.jp/ici/

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HARIKEN×なかひら まい
イラストクリエイターズインク企画展<モンスターと精霊の集い>
http://www.studiomog.ne.jp/ici/
12月4日(金)〜12月10日(木)11:00〜20:00(入場無料)
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◎5日(土)17:00〜19:00 オープニングパーティー<Cookie & Monster>開催

同日18時から18時半には、HARIKENとなかひら まいによるライブペイントも予定。クッキーとお茶を用意して、皆さまのお越しをお待ちしています。
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会場:原宿 デザイン・フェスタ・ギャラリー EAST・2F 和室(東京都渋谷区神宮前3-20-2)

JR原宿駅(竹下口)より徒歩9分
東京メトロ・銀座線/千代田線/半蔵門線・表参道駅(A2番口)より徒歩9分
東京メトロ・千代田線/副都心線・明治神宮前駅(5番口)より徒歩5分
地図:http://www.designfestagallery.com/submenu/contact/index.html
お問い合せ:03-3479-1442(デザイン・フェスタ・ギャラリー)

HARIKENのHPはこちらです。
http://madpandafactory.seesaa.net/
http://hariken.net/
http://www.flickr.com/photos/hariken/

2009/11/24

鏡のオブジェを製作


(枠にモデリングペーストを塗ります)


(枠にアクリル絵の具で絵を描いていきます)


(絵が仕上がったら乾燥させ、最後にニスを塗ります)

完成品は展覧会で!

HARIKEN X なかひら まい EXHIBITION
モンスターと精霊の集い

日時:12月4日(金)〜12月10日(木)11:00〜20:00(最終日は19:00まで)入場無料
※12月5日(土)17:00〜19:00にオープニング・パーティCookie&Monster(入場無料)を行います。お気軽に参加ください。(18:00〜LIVE PAINT決定!)

会場:原宿デザイン・フェスタ・ギャラリーEAST2F和室
JR原宿駅(竹下口)より徒歩9分 東京メトロ・銀座線/千代田線/半蔵門線・表参道駅(A2番口)より徒歩9分 東京メトロ・千代田線/副都心線・明治神宮前駅(5番口)より徒歩5分
地図:
http://www.designfestagallery.com/submenu/contact/index.html

お問い合せ:03-3479-1442(デザイン・フェスタ・ギャラリー)

2009/11/20

スプーのアクリル画を制作中!









完成品は展覧会で!

HARIKEN X なかひら まい EXHIBITION
モンスターと精霊の集い

日時:12月4日(金)〜12月10日(木)11:00〜20:00(最終日は19:00まで)入場無料
※12月5日(土)17:00〜19:00にオープニング・パーティCookie&Monster(入場無料)を行います。お気軽に参加ください。(18:00〜LIVE PAINT決定!)

会場:原宿デザイン・フェスタ・ギャラリーEAST2F和室
JR原宿駅(竹下口)より徒歩9分
東京メトロ・銀座線/千代田線/半蔵門線・表参道駅(A2番口)より徒歩9分
東京メトロ・千代田線/副都心線・明治神宮前駅(5番口)より徒歩5分
地図:http://www.designfestagallery.com/submenu/contact/index.html

お問い合せ:03-3479-1442(デザイン・フェスタ・ギャラリー)

フィギュア製作中002


石膏型に粘土をいれる


石膏型からとったところ


2日ほど乾燥させる


カッターやサンドペーパーで成型する


結構、根気のいる作業だ


ジョイント部分を丁寧に削る


再び乾燥

完成品は展覧会で!

HARIKEN X なかひら まい EXHIBITION
モンスターと精霊の集い

日時:12月4日(金)〜12月10日(木)11:00〜20:00(最終日は19:00まで)入場無料
※12月5日(土)17:00〜19:00にオープニング・パーティCookie&Monster(入場無料)を行います。お気軽に参加ください。(18:00〜LIVE PAINT決定!)

会場:原宿デザイン・フェスタ・ギャラリーEAST2F和室
JR原宿駅(竹下口)より徒歩9分
東京メトロ・銀座線/千代田線/半蔵門線・表参道駅(A2番口)より徒歩9分
東京メトロ・千代田線/副都心線・明治神宮前駅(5番口)より徒歩5分
地図:http://www.designfestagallery.com/submenu/contact/index.html

お問い合せ:03-3479-1442(デザイン・フェスタ・ギャラリー)

2009/11/19

スプーのフィギュア製作中!











 展覧会のために、こつこつと作業をしていた。このスプーのフィギア、作り方は単純だけど本格的。まず、彫像用の油粘土で立体を作ってから、石膏で型取りする。そして型に石粉粘土を詰めてパカッと外す。型取りするから、まったく同じ顔のスプーがいくつもできた。何だか楽しい。これから色を塗って、ニスで仕上げるつもり。完成品は、展覧会で展示します。お楽しみに。

HARIKEN X なかひら まい MASHUP UNIT "ILLUST CREATORS, INC."
“モンスターと精霊の集い”

2009/11/06

百年に一度の伝承

 名草戸畔(なぐさとべ)の原稿は、今まで公開されていなかった「口伝」を扱っている。この口伝は、「宇賀部神社」宮司家の小野田寬郞氏の家に内々に伝わってきたものだ。小薮繁喜氏が七十年も所蔵していた、昭和十二年に名草小学校で演じられたお芝居の台本にも、「小野田口伝」に通じる内容が含まれていた。

 わたしたちがこの口伝を採集したのは、2006年11月のことだ。わたしはこの現代に、いまだに知られていない伝承を新たに発掘するなどということが起こるとは思っていなかった。そうした伝承や民俗は、すでに調べ尽くされているか、あるいは過疎化が進み消滅してしまったかのどちらかだと思っていた。ところが、現在の和歌山市と海南市には、まだ未発掘の伝承が残っていた。しかも紀伊は、ヤマト王権のお膝元。紀ノ川や紀ノ川平野は、古代史的にも重要な地点だ。

 こんな場所から未発掘の口伝や伝承が出てくることなど、数十年か、百年に一度ぐらいの話だ。そういうことは、古代史ファンは百も承知だった。調べはじめた直後から、わたしと社長が作っていたナグサトベのブログ(現在は原稿執筆のため閉鎖)には、ディープな古代史ファンが集まってきた。

 出版に携わる人であれば、本来は、この古代史ファンたちと同じ嗅覚をもっているはずだ。ところが出版界は、次第にマーケティングの考え方を取り入れるという誤りを犯すようになってきた。そうしているうちに、百年に一度出るかで出ないかという貴重な伝承の意味も理解できなくなってしまったのだろう。しかし、嗅覚をもった編集者が一人もいなくなったとは思っていない。二千年前を生きたナグサトベは、わかってくれる編集者が出てくるまで、あの世で待っているのかもしれない。

2009/11/04

「名草戸畔(なぐさとべ)」 近況報告

名草戸畔ついったーでも随時お知らせしていますが、名草戸畔の本は、現在、原稿の細部の修正をしています。伝承保持者である小野田寛郎さんと小薮繁喜さんの公認もいただき、 着々と進行しています。和歌山からは、本が出るのを今か今かと待っているという、うれしい声もたくさんいただいています。1月後半には、和歌山でトーク ライブも行うことになりました。

ナグサトベの本は、出る前から「読みたい!」という声がたくさん届いています。どうしてかというと、和歌山には、まだ知られていない貴重な伝承が残っていることがわかったからです。

その伝承とは、和歌山の古代豪族ナグサトベが「神武軍に負けなかった」というものです。『日本書紀』の記述とは真逆のこの伝承からは、王権とは無関係の、普通の人々の歴史が見えてきます。自然と共生する縄文人の暮らしも見えてきます。また、この伝承がいったいどういう過程で消えてしまったのか、という問題については、明治から昭和初期までの戦争の時代が大きく関係しています。つまり、ナグサトベは古代だけでなく、近代史の問題をも内包しているのです。様々な事情が重なり、ナグサトベ伝承は「宇賀部神社」宮司家出身の小野田寛郎さんが「覚えていた口伝」と、小薮繁喜さんが所蔵する、名草小学校で演じられたお芝居「名草戸畔」が最後の伝承となってしまったようです。

この伝承を本にして残しておかなければ、和歌山に関しては、『日本書紀』に書かれたことばかりが残ることになります。このままでは、支配階層とは無縁のふつうの人たちの間で語り継がれてきた歴史や伝承は、「残る価値のないもの」ということなってしまいます。しかし、わたしは、読者がそう考えているとは、とても思えません。だって、通り一遍の歴史より、地域の伝承の方がずっと自由で面白いからです。しかも似たような話は、和歌山に限らず全国にもあるはず。和歌山出身でない方も、共感できる要素はたくさんあります。

和歌山のみなさんや、全国の古代史ファン、あまり古代史に詳しくない人たちまでもがこの伝承に大きな関心を示しているのは、上に記したような「ナグサトベ伝承の意味」を理解しているからだと、わたしは思っています。ところが、出版社だけが、この状況を理解できないというおかしな事態がおこっています。どういうわけか「現場の温度」と「出版社の温度」が、ぜんぜんちがうのです。

ちなみに、出版社が原稿を前に必ずいうことは、以下の点です。

1.伝えたいことをもっているか。それを読みたい読者はいるか
2.一部の読者だけではなく、多くの人の心に響くテーマを持っているか
3.関係者の承諾を得られているか(主にノンフィクションの場合)
4.プロモーションの基盤があるか

ナグサトベに関しては、このすべてがそろっています。3.に関しては、小野田さんの了解済みなので、口伝のニュースソースは明確です。なお、今まで知られていなかった小野田口伝を採集したということは、古代史にとっても重要なことです。この口伝を掲載した本は、「レジェンド」になること間違いなしです。これだけ様々な条件がそろっていて、本を読みたい人が待っているというのに、出版社だけがこの状況を理解できないというのは、ものすごく「いびつな状態」といえます。本当に、 驚くべき状況です。

そこで、みなさんにお願いがあります。ブログやHPをお持ちの方には、本が出版された際にアマゾンのリンクを張っていただける方を大募集します。ぜひ、MOGまでメールをお寄せください。名草戸畔ついったーのフォロー、MIXIコミュの参加も大歓迎です。

潜在的に、このテーマに興味を持っている人は、たくさんいると思います。その方達が出てきてくれることで、出版は実現に近づいていきます。たくさんの「まつろはない者たち」の力で、この状況を突破していきたいと思っています。

2009/11/03

“モンスターと精霊の集い”












12月4日から、イラストクリエイターのHARIKENさんと展覧会を開くことになりました。HARIKENさんは、かわいらしいモンスターのキャラクターイラストやオリジナル・フィギアを制作しているクリエイター。和室という不思議なギャラリーで、モンスターと精霊のマッシュアップを展開する予定。さて、どんな空間が生まれることやら































HARIKEN X なかひら まい
MASHUP UNIT "ILLUST CREATORS, INC."
“モンスターと精霊の集い”

日時:2009年12月4日(金)〜12月10(木)11:00〜20:00
   入場無料
会場:原宿 デザイン・フェスタ・ギャラリー EAST・2F 和室
  (東京都渋谷区神宮前3-20-2)

JR原宿駅(竹下口)より徒歩9分
東京メトロ・銀座線/千代田線/半蔵門線・表参道駅(A2番口)より徒歩9分
東京メトロ・千代田線/副都心線・明治神宮前駅(5番口)より徒歩5分
地図:http://www.designfestagallery.com/submenu/contact/index.html
お問い合せ:03-3479-1442(デザイン・フェスタ・ギャラリー)

オープニング・パーティ(入場無料)を同会場で開催!
2009年12月5日(土)17:00〜19:00 Cookie & Monster パーティを開催します。
(18:00〜18:30 HARIKEN × なかひら まい LIVE PAINT決定!)
クッキーとお茶を用意して、皆さまのお越しをお待ちしています。

詳しい情報は以下のサイトまで。
http://www.studiomog.ne.jp/ici/exhibition.html

2009/10/13

東京の精霊

 最近、日曜日になると、奥多摩やら皇居の雑木林、六義園などに出かけている。名草戸畔(なぐさとべ)の取材で和歌山や大分に行ったとき、東京はいかに緑が少なく酸素が薄いかよくわかった。近所に駒沢公園があって、大きな木がたくさん生えているけど、なぜか和歌山のような開放感はない。たぶん、足下が自然の土ではなく、コンクリートの道路だからだ。おかげで、時々こうして近所に「遠足」に出かけないと、なんとなく煮詰まってしまうようになった。遠足といっても、出かけるのはほとんど都内。都内でよさそうな場所を探して、行ってみる。

 これは、皇居の中にほんの少し残っている雑木林の植物たち。きれいな清水も湧き出ている。






 つづいて、駒込の六義園。日本庭園だが、奥には本物の自然が残されている。




 奥多摩には、こんなに自然が。




 どこも東京都は思えない風景。普段は気がつかないけど、東京にも自然が残されている。そして自然の精霊は、本当は、そこかしこに存在している。人間の方が、精霊をみる心を失ってしまっただけだと思う。


【魔法使いのおばあさんみたいな雲】

2009/10/08

大国主とスサノオ 〜後編〜

 大国主とスサノオは、たいがい、このようにセットになっているのだが、よく調べてみるとこの二人は『記紀』にあるように、親子(同族)ではないらしい。宗教学者の松前健氏は、九世紀に完成した出雲の地誌『出雲国風土記』が、大国主とスサノオの関係についてまったく触れていないことを例に挙げ、「(スサノオと大国主は)本来、無関係であろう」と言っている。また、出雲では、先住の王家の血を引くと自称する旧家が十軒ぐらい残っていて、「自分たちは縄文時代から続く先住民、大国主の末裔。スサノオは別系統の部族」と語っているという。面白いことに、文献を調べている学者も、旧家の口伝(地元の伝承)も、似たようなことを言っている。

 そういえば、『日本書紀』ではスサノオは新羅の国から来たと思われる記述があり、出雲の伝承では秦の国からやって来た渡来人と伝えられているそうだ。つまり、文献と伝承、どちらもスサノオは渡来系の部族という認識をしているように思う。渡来人とは、どう考えても弥生人のことだろう。弥生人の子どもが縄文から続く先住民の大国主というのは、どうも、つじつまが合わない。すると、「大国主はスサノオの子ども(または六世孫)」という設定は、八世紀に『記紀』が編纂された際、作られたのではないか。考えてみれば、スサノオの子が大国主であれば、日本列島には先住の人たちは存在していないことになる。おそらく、この設定は、百済や新羅の渡来系の人たちが中心だった八世紀の中央政府によって、意図的に作られたのだろう。

 大国主を祀る神社には、必ずスサノオが頭にくっついてくるが、これも『日本書紀』成立後の八世紀以降のことと考えられる。だからスサノオの神社は全国にたくさんあるように見えるが、よく伝承を調べると、実際の祭神は大国主の地域もあるかもしれない。スサノオの方が後から上書きされたケースも多いのではないか。『記紀』にスサノオの子と書かれたからといって、大国主の正体が完全に消せるわけでもない。八雲の「氷川神社」や伊豆の「来宮神社」のように、大国主についてリアルな伝承が未だに残っているのは、かつて先住出雲の人たちが列島に暮らしていた名残なのではないだろうか。大国主の物語は、正史とされる文献ではなく、旧家の口伝や伝承の形で伝わってきたのかもしれない。対して、スサノオの八岐大蛇退治の物語は『出雲国風土記』にないため、地元の伝承ではないという説もある。八世紀の宮廷の物語作者によって、政治的な事情で創作されたという見方も多い。

 大国主伝承については、二年程前、名草戸畔の取材で和歌山を訪れたとき、興味深い話を聞いた。ライターの北浦さん、Iさん、社長、フォトグラファーのマリちゃんと、貴志川の「大国主神社」に出かけたときのこと。たまたま神社を散歩しているおじさんに出会った。おじさんは、氏子の村々や、神社のそばを流れる国主淵(くにしのふち)に伝わる伝承について、ひとしきり語った後、突然こんな話を始めた。
「この間、氏子の青年団で、熊野の本宮大社にお参りに行ったんです。熊野古道を歩いて行ったんですよ。本宮大社で、徒歩できたことを話したら、宮司さんがこういうんです。『どうして、そちらからわざわざお参りにいらしたのですか。あなたたち(大国主神社)のほうが偉いのに』」
 もしかしたら熊野の宮司は、スサノオより大国主のほうが古くからこの土地に住んでいたことを知っているのかもしれない。和歌山は、今も、古代が生きている不思議なところなのだ。

和歌山県貴志川町の「大国主神社」

 とはいえ、大国主が祀られた地域はすべて、縄文時代からの先住民が途絶えずに暮らしていたと断定することはできない。スサノオは、出雲の阿国などの旅芸人集団が各地に広めたため、中世以降になって、全国規模に広がったという説もある。それと一緒に大国主も祀られたはずだ。ややこしい話だが、古くからいる大国主と、中世になってスサノオにくっついて祀られた大国主もいるらしい。スサノオについても同様で、古くからのスサノオ伝承の残る地域もあれば、八世紀以降、中世以降に祀られた地域もあるだろう。つまり、先住大国主と渡来系スサノオは、時代が下るにつれ渾然一体となって広がっていったのだろう。いつのころからか、先住、渡来の区別などなくなり、混ざり合っていったのだ。大国主の草木の薬を使った病気封じの伝承と、八岐大蛇退治の舞が渾然と共存している八雲の「氷川神社」もその一つの例と考えられる。

東京八雲「氷川神社」の神楽殿で披露される剣の舞

参考文献:『出雲神話』松前健(講談社現代新書)『幸の神と竜』谷戸貞彦(大元出版)