2011/01/17

旧家の伝承

 名草戸畔について調べ始めてから、わたしのまわりに、口伝や伝承を受け継いでいる旧家の人が何人か集まってきた。
 その内の一人は、ディープな古代史マニアで知らない人はいない「丹生都比売神社(にゅうつひめじんじゃ)」に関わる貴重な話を伝えているK家のKさんだ。
 天野の里や高野山では、かつて丹生(にゅう)一族という謎の集団が暮らしていた。山の王「丹生明神(丹生一族の神)」が後からやって来た空海に高野山の土地を譲ったという有名な伝説がある。ところが土地の伝承はこれだけでは終わらない。丹生一族が和歌山に移住してくる前に、この土地に住んでいた先住の人たち(何故か大伴と呼ばれている)が丹生一族に土地を譲ったという。先住の人たちは、それまで山で猟などをして暮らしていたが、丹生一族から稲作などを教えてもらい、豊かに暮らしていけるようになったらしい。(丹生都比売は、一般には丹生(水銀を含む赤い砂)の女神と言われているが、K家の伝承では、単純に丹生の採掘を守る神ではなく、農耕や水など生活全般を見守る女神であったようだ。)
 これは、大伴→丹生→空海の二段階にわたる友好的な国譲りが行われたという伝説である。丹生については不明な点も多く、いろいろ複雑なのでここでは書ききれないが、後から移住してきた人たちが先住の人たちと折り合って共に生きてきたというのだ。和歌山では「渡来人が先住民を征服」的なありきたりな構図を覆す伝承を目の当たりにする。いや、よく調べれば、こういう物語は全国各地に残されているのかもしれない。ただ気がつかないだけで。
『名草戸畔 古代紀国の女王伝説』には書ききれなかったが、丹生氏は紀氏と深く交流していたため、名草とも関係がある。「丹生田殿神社」には、丹生大明神の御子神として大名草彦命が祀られている。

2 件のコメント:

  1. 和歌山に住んでいても、
    丹生都比売はわからない事だらけなんです~

    ワカヒルメムチと同神らしいから、
    機織りの神のイメージ有りました

    そういえば、イダキソ神社の奥宮は丹生神社だから、
    名草と関係あるんじゃないかと思ってたんですよ!

    でも、丹生族は出雲の感じしないなあ
    (丹生都比売神社の所在地は伊都郡だから、九州??)

    名草戸畔の本、読ませていただきました
    待った甲斐ありました!!

    ヤマモト

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  2. ヤマモトさま

    こんにちは。
    ワカヒルメムチもありますが大日如来と習合しているので、皇祖神にならなかったアマテラスという感じでしょうか。

    丹生都比売神は本当に難しいです。
    イタキソや日前宮と関係があるのは紀氏との関連でしょう。アカヒルメなんかも出て来ます。
    「住吉大社年代記」を見ると、
    紀氏(紀朝臣か?)、丹生、住吉三神を祀る人たちが渾然一体となっています。

    名草戸畔の本を読んでいただき、
    ありがとうございます!

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